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「撮影から帰って来たんじゃないんですか?」
「ああ、忘れ物取りに来ただけなんだ」
大きなジュラルミンケースを振り回しながら部室を出て行く。
「おっとその前に、この紙に名前書いといてくんない?」
「これは何ですか?」
「まあまあ、見学の生徒には名前を書いてもらうんだ。ほら野球部の練習が始まっちまう、早く早く」
くしゃくしゃになった一枚の紙を差し出された。半分に折られているので何が書いてあるのか分からない。
「そうなんですか、分かりました」
部長が差し出した紙に名前を書く。
「これでいいですか?」
「おうよ、サンキューな。じゃあまた明日部室でなー」
そう言うともの凄いスピードで廊下を走っていった。あんなに重たそうな機材を持って走れるなんて凄い体力だ。
嵐のように去っていった部長の後ろ姿を見送る。
真っ赤に燃え上がる炎のように熱くてパワーのある人だった。
一人残された部室はまた風の音だけが聞こえてくる静かな部屋になる。見学って何をどうすれば良いのだろう。
勝手に触ると壊しちゃうかもしれないし、そもそも、私はなのはの付き添いなんだから体験する必要ないんだよ。
でも、少しだけならいいかなって思えてきた。
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