言い訳

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 横暴としか言いようがなかった。自分達の非を認めず、急患が乗っている救急車を一方的に責め立てている。さらに、事態を悪化させることが起こった。救急車を運転していた救急隊の人。彼は根っからの江戸っ子であり熱血漢だった。自分のやっていることに使命を感じていると言っても良かった。老婆の命を助けるのが第一だというのに、それを邪魔してくる危険な奴らに腹を立て、車から降りると向こうは三人だというのにも、関わらず立ち向かいケンカを初めてしまった。  こうなっては、収拾はつけようがなかった。交差点の周りには野次馬が集まりケンカを静観していたり、触発され救急隊に荷担するようにケンカに乱入する者まで現れた。通報を受け警察を駆け付ける。これで事態が収まれば苦労しない。悪いことは重なり続ける。危険な奴らの一人が拳銃を所持していたらしく、警官と救急隊に向けて、それを発砲したのだ。  男は思わず救急車の中で身を伏せ耳を塞いだ。自棄だったのだろうか。それとも、薬の影響なのか。危険な奴らの一人は拳銃を撃ち続けた。弾丸は野次馬の人混みに命中したらしくパニックに陥った。もうどうしようもない混乱である。だが、これは男にとっては都合のいいことであった。もうこれ以上、これに関わってなどいられなかった。第一、男は全くと言っていい程に無関係者なのだ。半ば強引に救急車に乗せられただけの。  男はパニックに紛れて救急車から脱出すると、混乱する人混みの中へと飛び込み、這いずるようにして学校へと向かった。  とんだ災難としか言いようがなかった。言い訳としては十分すぎる。十分すぎるが、信じてもらえるかどうか分からない。教室の前まで来ると、再度、男は自分の腕時計を見直した。もう二時限目も半分、過ぎようとしていた。  気まずいが教室に入るしかない。男はクシで髪の毛を整え、ネクタイも締め直し、崩れかけた背広も着直した。 (本当に、どんな言い訳をしたらいいのか。自分の生徒達に・・・)  教師である男はそう思いながら、教室の戸を開けた。
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