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その言葉一つとっても、それはまるで確認のような、甘い痺れを感じさせられるのは、やっぱりこれが恋だから、だろうか。
まるで、他に誰かと来てたのかよ、という直くんのちょっと黒い意図を感じる。
「去年も来たけど、それは女の子とで……」
「カワイソーな奴」
「っ!!」
気を遣って言ったのに、その言い方はあんまりだ。
いや、もちろん女の子と来たのは本当だけど、他にもっとあるんじゃないの!?
「……でもま、」
「え?」
「いやなんでもない。なんか食う?」
「……っ」
ふっと笑った直くんが、後ろのポケットに手を突っ込んだまま、こちらを振り返った。
細い身体。ぺらっとしている薄い身体なのに、きっと今から信じられないくらいの量がそこに吸収されるんだろう。
「……どうぞお手柔らかに」
深々と頭を下げたあたしに、直くんが小突いた。
初めて触れ合って、ドキッとする。
頬を染めた時には、直くんは前へと向き直り、「何食おー」なんて色気のない台詞。
そんな何気ない空間が、酷く心地よかった。
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