九歩目 「繋がる」

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ええ! 怒るでしょうよ、普通怒るでしょ!? 何なのこの、天然モテ男! それが普通だと思ったら大間違いなんだからね!? 「楓奈」 「来ないでよ」 「んでだよ」 「なんでもいいからっ!」 スルーすればいいだけの話。だってこんなこと分かり切ってたこと。 直くんがモテることくらい百も千も承知だし、そんな直くんと付き合えたことに奇跡を感じていることも事実。 それなのに心がついていかない。めちゃくちゃに傷つけたいような、泣きわめいてしまいたいような、そんな腹黒い何かがあたしを取り巻く。 「……楓奈。」 「……っ」 その声色が、さっきとは比べものにならないくらい、低く沈んだのが分かった。 何様の分際で、直くんを無視しようとしているんだ。 そんな貴方が好き。私のことは捨てないで。ってすがるのがあたしの正しい立ち位置だろう。 ……分かってるのに。 ギュッと眉を顰めて、頬を膨らませた。 立ち止まったはいいものの、どんな顔をして振り返ればいいのか分からなかった。 笑えないの、上手に。 ……ああもう、最低だ。
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