九歩目 「繋がる」

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「……あ」 その時、直くんから小さな声が零れた。 「楓奈、あそこ!」 「――っ!」 あたしを追い抜いた直くんに、ギュッと手を引かれて面喰った。 まだ「ごめんね」も「いいよ」も交わしてないのに、直くんはもうなかったかのように走り出している。 腕を引かれて慌てて続いた。 浴衣姿にはギリギリのスピードで直くんが駆けていく。 「直くん……!?」 すると、辿り着いた先は陸橋の下。 「ここからでもギリで見えんじゃね?」 陸橋を半分進んだところに、二人分のスペースが空いていて直くんがしゃがみこんだ。 「うん。楓奈も早く」 直くんが頷いて、手招きする。 今のあたしの無礼な態度に何も言わずにいてくれるのだろうか。 ごめんねって言いたいけど、それも言葉にならずに佇む。 立ち竦んだあたしを見て、直くんが静かな視線を向けた。 「拗ねてないで、早く」
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