九歩目 「繋がる」

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――なんで。と聞かれても困る。 慌てて顔を向けた時、ふいに遮られた視線。 気がつけば唇が触れていて、面喰った。 離れた唇からは、いちごシロップの味。 買い込んだ食料はさておき、かき氷から食べてるってどういうこと? 唖然として直くんを見つめる。久々のキスがまさかこんなにも突然訪れるなんて。 「……言え」 直くんの視線は依然強く。 「言わないと――」 直くんが言いかけたその時、一発目の花火が上がった。 流れていたアナウンスは右から左だったらしい。 突然、真後ろから音が弾けて身体が揺れた。 直くんのその綺麗な顔に、色とりどりの光が当たり、そして静かに消えていく。 「……すげぇ」という声が漏れたのは、あたしが花火へと振り返ってすぐのことだった。
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