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花火を見ていると、今しがたの些細ないざこざもどうでもいいことのように消えて行った。
それはどうやら直くんも一緒だったらしい。
花火の合間も、話を聞かせろとは言わなかった。
ただ、微かに、腕と腕が触れ合う。
手を繋ぎたいと思った。でも言えなかった。さりげなく直くんの隣に手をついてみたけど、それ以上近づくことが出来なかった。
「楓奈」
耳元で甘い声が弾ける度、花火の音みたいに心臓がドンドンと鼓動を零す。
もしかして二回目……!?
なんて期待して振り返るも、
「食う?」
「……、」
色気のない会話が続き、差し出されたフライドポテトにおずおずと手を伸ばす。
「ありがと……」
と、受け取ろうとした時。
「――……っ」
ギュッと肩を抱き寄せられて面喰った。
ひゅ~……という花火が夜空を駆け上がる音に紛れて、触れた唇。
さっきとはまた違う、深いキスがあたしの身体中を駆け巡っていた。
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