九歩目 「繋がる」

25/33
前へ
/482ページ
次へ
花火大会が終わる頃には、もう数えきれないほどのキスをしていた。 唇がちょっと痛くなるくらい。 びっくりした。人ってこんなにもずっとキスしていられるんだ。 ざわざわと会場を後にし始めた人の声が聞こえて、我に返った。 目の前にいるのは、今までと同じ直くんなのに、どこか恥ずかしさを覚えた。 じっ、と。 やっぱり視線の強い直くんから、そろりと視線を逸らして、俯く。 恥ずかしさでどうにかなってしまいそう。 ……このまま帰ることなんてできなさそう。 「……楓奈……」 名前を呼ばれただけでほとばしる。身体の疼き、甘い余韻。 今夜は帰さないって言われたら? 言われたら、どうする!? 「俺、」 「――!!」 あたしの肩に凭れ掛かってきた直くんに咄嗟に目を瞑る。 どどどどうしよう。心の準備が……! まだ心の準備が……っ!! 「腹減った」 「っ!!!」
/482ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1820人が本棚に入れています
本棚に追加