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「計画!?」と、訊ねても「まぁね」と、いう返事だけで、具体的な話は教えてくれない。
一人、だくだくしている自分が恥ずかしい。もしかしたらそれさえも、直くんは楽しんでいるのかもしれない。
食事――もう何度目か分からない――を終えた直くんに連れられて、席を立つ。
外はもう、お祭り騒ぎの夜を抜け、優しい静寂に包まれる。
さっきは見えなかった月が、ぷかりと浮かぶ。今日のお月様はどこか不格好で、にっこり笑っているように見えた。
「楓奈」
――と。直くんがあたしに手を差し出した、その時。
「あれ? もしかして直くん?」
「――!」
背後から声を掛けられ、静止する。
あたしへと手を差し出していた直くんが、視線を上げて硬直する。
流れ作業のように振り返った。
そこには、浴衣姿の集団の中、一際目を引く美人がにこっと口角を上げていた。
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