十歩目 「手当て」

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「……!?」 その微笑の意味が分からず固まった。ルリさんは「ごめん」と笑ってカップを持った。 「何だか可愛いな、って」 いやいや、可愛いのはあなたの方です。こんなちんちくりんなあたしめなんてそんな……! なんていう言葉が出るはずもなく、戸惑ったままアイスクリームを頬張った。 味なんてもちろん。……分かるはずがない。 「直くんとは同じクラスなの?」 「……!」 唐突に訊ねられた問いかけに、キタ、と思った。 ルリさんがあたしを待っていた理由は、これしかあり得ない。 直くんとのことの偵察? ……今更何の為に? 「違い……ます」 おずおずと答える。スプーンを置こうとすると「食べて」と促される。 そこで言われた通りにしか出来ないあたし。 この場の空気は完全に、ルリさんに支配されている。
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