1.時を止めた年月(じかん)時間 

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時雨から受話器を受け取った小母さんは、 電話を手にしたまま、崩れ落ちるように倒れる。 「母さんっ!!」 時雨は、崩れ落ちた小母さんの体を必死に 支えながら、名前を呼び続ける。 「時雨……。  父さんと……氷雨が……」 小母さんはそれだけ告げると、 発狂したように一度、叫んで意識を失った。 「悪い、由貴。  母さん、頼む」 時雨に託されて、 小母さんの傍に歩み寄る。 その隣、時雨は小母さんが話した 電話の子機を手に握りしめて、相手側と話し出した。 「有難うございます。  母を病院に搬送次第、  親父と氷雨のところに向かいます」 そう告げて時雨は、電話を置いた。 「時雨?」 受話器を置いた時雨の目から、 感情はは伝わってこない。 「由貴、救急車を呼ぶ」 そう言うと、時雨は受話器を再び握りしめて 119番をプッシュする。   救急隊が家に駆けつけて小母さんは、 担架に乗せられて多久馬総合病院へと運ばれた。 救急車を降りると、小母さんは待機していた 医師や看護師たちに連れられて処置室へと移動する。 小母さんの傍に近づいていく時雨と少し離れて、 自分の携帯電話で、飛翔のナンバーを表示させる。 「早城」 ワンコールで電話に出る飛翔。 「飛翔、時雨の小母さんが倒れた。  今、多久馬総合病院に居る。  なんか、時雨の様子もおかしいんだ。  少し前に、警察から電話があったみたいで」 「わかった。  すぐに行く」 飛翔との電話が切れると、 私はまた、時雨の元へと駆け寄る。 時雨は、処置室の前のソファーに 座ったまま、握り拳を作って ただ閉ざされた扉を見つめていた。 「時雨……。  今、飛翔にも連絡とったよ。  飛翔もこっちに来てくれてるよ」 私がどんな言葉をかけても、 時雨の反応は鈍い。 「時雨、何があったの?  警察からの電話なんだったの?」 問い詰めるように尋ねる質問にも 時雨の反応はかえらない。 処置室のドアが開いて、 ストレッチャーに乗せられた 小母さんが、運び出されてくる。
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