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1-1 はじまり
ポツリポツリと小さな滴が
手の甲に落ちてきた。
「雨……?」
山道を行く荷車の荷台で
たくさんの荷物と共に揺られながら
俺は空を見上げた。
どんよりと重い雲が
この辺りの空を覆っている。
数時間前
人里から離れた
この薄暗い山道を歩いていたら
後ろから誰かに声を掛けられた。
振り向くと
ガーグァと呼ばれる大きな鳥が引く
荷車が近付いてきた。
俺に声を掛けたのは
ガーグァの背中に乗って
運転していたアイルーだった。
アイルーはネコによく似た姿をしているが
人と同じように生活し言葉を話す種族だ。
そのアイルーは交易品を
この先のミタマ村へ届ける途中だったようで
よかったら乗っていかないかと
誘ってくれた。
俺はその言葉に甘えて
車の荷台に乗せてもらうことにしたんだ。
次第に雨音が聞こえ始め
パラパラと本格的に雨が降り出した。
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