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「と、しますと…奥方さまは。」
「愛(めご)か。愛は勿論、俺の飯を作る。俺が作るのは主に、将軍か客人のものだ。」
「何と!」
(そんなにも、伸し上がられたのか!)
小十郎は再び感嘆する。
「俺だけではない、大抵は主人自らが客を持て成す。それが【流行り】だったと言えば聞こえは良いが…」
「……。」
「魂までは手放せなかったのだ、誰も。戦の終わりを知る友は皆、最期までそれを持ってあの世に行ったと思う。」
「戦無き世も平和ばかりではない、と?」
「平和だとも。ただ、均衡が無ければ成り立たぬ世ではあったな。」
「均衡…?」
政宗の話は本当に面白い。
何より偽りの無い事が解るから、小十郎は興味津々と耳を傾けていた。
「程々が肝心と云う意味だ。戦無きとて娯楽に溺れ過ぎては、早う呆けてしまうからな。」
政宗は語りながら、僅かだけ懐かしさを滲ませて笑った。
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