9人が本棚に入れています
本棚に追加
少しの時を遡る。
政宗に秀吉の牽制を任された成実は、その地で静かに戦っていた。
摩天楼の麓。
斬り合いになれば難しくなるその勝負を鍔で阻止し、政宗が悠々と進めるだけの時間を稼ぐ。
「口先だけではないようだな。流石は由緒正しき伊達の名を持つ者。」
そんな成実を、秀吉は正直に褒めた。
「しかし何時までも、貴殿の時間稼ぎに付き合うつもりはない。」
ギリ…ッ。
「…っ。」
「何故、禁じの触れが出た今日にまで摩天楼を登る。あれがどんなものか、知っているのか。」
言葉と共に、剣圧が重くなる。
成実は必死に塞き止めながら返事をした。
「知りませんよ。登るのは…あいつがそうしたいって言ったからだ。」
「成程。ならば止めるべきは貴殿ではないと云う事になるな。」
秀吉が更に力を込める。
その様子を察して、成実の顔付きも僅かに変わった。
「……俺たちは、終わらせたいだけです。」
「終わらせる?」
「沢山の人が傷付いていく、戦だけの時代。」
「……。」
「その時代を作るのに、あの塔の存在は邪魔だ。」
「それは私も同感だな。…そうか。」
納得したと頷く秀吉。
最初のコメントを投稿しよう!