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「それと、これは卒業祝い」
そう言って、相楽さんはもう一つ、大きな封筒を差し出した。
「君に、仕事のオファー。今度の仕事は、ちょっと大きな仕事だから」
「大きな仕事、ですか?」
封筒を受け取ると、相楽さんはニッと笑った。
「あるブランド会社が、新作発表のイベントするから、ランウェイを歩いてほしいってさ」
「え!?俺に…ですか?」
驚いて聞いた俺に、相楽さんは苦笑した。
「他に誰がいる?この前の写真が好評なんだ。その流れだろうね」
この前の写真、とは、相楽さんが個展を開いた時に出した、俺をモデルに使った写真の事だ。
初めて会ってから、約二年。
ずっとモデルに誘われ続けて、相楽さんの粘りに根負けしたのと、将来を見据えた時、モデルをやってみたいと思ったのがキッカケだった。
その初めての写真が、相楽さんの個展で出す作品だった。
「大変だったよ。問い合わせが多くて」
「なんか、すみません」
自分の所為で、相楽さんが大変な状況に陥っていたと思うと、なんだか申し訳なくて居た堪れない。
「なに謝ってんの。これ位は予想の範囲内だったよ」
謝った俺に苦笑した相楽さんは、「あっ」と言って、話題を替えた。
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