プロローグ

2/2
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「あの…先生俺、…」 「……離して…」 搾り出したような、細く消えそうな声。 憂いを帯びた瞳。 ガラスのように透き通った瞳から、とめどなく溢れている涙。 あの日。 彼女に冷たく振りはらわれたのを最後に、 俺は彼女に突然会えなくなった。 先の見えない想いは行き場をなくして 胸の奥に重く深く沈んでいる。 夢の中。 「…っ、…」 何度も何度も 彼女の泣く声が聞こえて。 そのたびに、 「あの時はごめん…」って、彼女に声をかけて。 …この声が 泣いていた貴女の心に、ちゃんと届けられたら良かったのに。 3年経った今でも、 俺の中での彼女は声を押し殺して泣いているんだ─
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!