第1章

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2013年8月某日 佐賀総合体育館 「まこっちゃん急げ急げ急げ急げー! 早くしないと遅れっちまうよー」 体育館に向かい日曜日で歩行者が溢れかえる歩道を疾走する全ジャーのニコニコ男子を息もからがらに追いかける紺色のブレザーを着た眼鏡男子。 恐らく高校生なのだろうが、1人は夏休み期間でも真面目に制服を着ている。 かたや、青を基色とした全ジャーで前も留めずに袖を捲り上げている。 性格は一目瞭然だ。 「ま、待ってくれよー。 だいたい、遅れてるのは君が三時間も盛大に寝坊した…せいだろ」 立ち止まり肩で大きく息をしながら、やっとの思いで声を絞り出した様だが 「仕方ねぇじゃんか、寝坊なんてみんなするもんじゃん? てか、まこっちゃん走り込み足りないからすぐ疲れんだよ」 彼には伝わらないまでか、逆に痛いとこをつかれてしまった。 なにか言いたげだが結果が見えてるだけに、あえて何も言わないことを選択したのだろう。 体育館に駆け込み左の方の階段を駆け上がり、人を掻き分けながらコートを見下ろせる踊り場の端の位置まで行き着いた二人。 「あっぶねぇ、なんとか間に合ったみたいだな」 「君が寝坊しなけれ…………」 聞いていないのを承知でボソボソと愚痴を呟く。 それをよそに場内のアナウンスに耳を傾ける全ジャー男子。 「ただいまより、平成25年度全国中学卓球大会佐賀県予選 決勝戦を行います」
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