第1章

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観客席、審判に一礼をし互いに歩みより相対する一青と楓。 「オメー女みてぇだな、髪は長いし色白でおまけに腕も細い。 そんなんで強ぇ球打てんのか?」 うつむき加減の楓を覗き込むようしながら一青が言い放つ。 「それを言ったら君だってチビじゃないか」 「卓球は身長じゃねぇ! いかに相手より強ぇ球を打ち込むことができるかだ! お前みたいなヒョロヒョロの球なんかにゃ負けねぇかんな!」 言い争う二人を見かねて審判がそれぞれの位置に着くように促す。 卓球の試合ではゲームを始める前に軽いラリーを行うのだが、一青が一方的にスマッシュやドライブを打ち込み、ラリーは終了した。 楓のサービスからゲームが始まったが、ラリー同様に一気に六点を失ってしまった。 「あっちゃあ、こりゃダメだぜまこっちゃん。 ワンサイドゲームだよこのままじゃ」 「分かってて言ってるんだろ? あの子は'このまま'じゃないってことを」 「バレちった? そりゃそうだよ、清陵の古賀が3コロで負けたんだ、あいつには何かある」 おちゃらけた台詞を言いながら鋭い眼差しでコートを見下ろす全ジャー。 その直後――――――― 先程まで静かに見守っていた観客が歓声を上げ始めたのだ。 眼鏡と全ジャーは顔を見合せながら声を揃えて言った。 「「これがその'何か'の正体か!!」」
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