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フィールドにはモンスターが出ないのでのんびりした道中になった。
「ピクニックみたいだね~♪」
「空は真っ赤ですけどね」
「魔族的には晴天日和!」
「なるほど……」
魔族の領地ルクセリアに青空は存在しない。
赤々とした夕焼け空っぽいものが標準景色なのだ。夜になると青い星が輝き出す。
魔王さまの保持する転移魔法で移動しても良かったのだが、折角だからルクセリアのフィールドを三人で歩こうということになったのだ。
それは構わない。
しかし結果的には『三人で歩く』ということにはなっていない。
歩いているのは二人だけだ。
では俺と魔王さまの二人しかいないのかというと、もちろんそういうわけではない。
「お、そろそろ見えてきたっすね、魔王さま」
ナギもきちんと付いてきている。
しかし歩いているのは二人。
どういうことかというと、
「うん。ボクも見えるよ。視界が高いと便利だよね」
「俺は重いんですけどね」
「何か言った?」
「いえ何も」
魔王さまだけは歩いていないのだった。
俺の左腕に腰かける形で持ち上げられている。いわゆる『幼女だっこ』だった。
というわけで俺の左腕は魔王さまに塞がれている。
これから修行だというのに不便極まりないのだが、しかしここは魔王さまが断固として譲ってくれなかった。
『お兄ちゃんの左腕はボクの指定席。ずっと抱っこしててね!』
……などと向日葵のような笑顔で言われてしまい、うっかり頷いてしまったのだ。
後から後悔してももう遅い。
まあサポートに徹する限りは片腕でも大丈夫ではある。
俺の武装である『女王様の鞭』はミドルレンジにも対応できる。
……でも魔王さまを抱いたまま『おーっほっほっほっほっ!』はやりたくないなぁ。
そんなやり取りをしているうちに目的地へと辿り着いた。
魔王さまは指先をくいっと動かしてダンジョンクエスト開始ウィンドウを表示させる。
『黄泉の道標』
練兵ダンジョン。
ダンジョンレベルを設定してください。
という表示に従って魔王さまはダンジョンレベルを十段階の三辺りに設定した。
「……いきなり三とか大丈夫なんですか? 無難に一から始めて徐々に引き上げていく方がいいと思うんですけど」
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