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今波祥平(イマナミ ショウヘイ)はいつものように家路へと着いた。
「ただいま。」
祥平はそう言って家の中に入るが返事は返ってこない。
「まぁ、そりゃあそうだな」
なんせ両親は三年前に交通事故で他界、一人っ子だったためこの家には自分以外の人間はいるはずがないのだ。
そう‘人間’は…
「おぉ、祥平か良いところに帰ってきてくれたな、少々話があるのだがよいか?」
玄関から居間に続くドアを開けると丁度男が階段を降りてくるところだった。
男は三十代前半といったところだろうか?寝癖だらけのボサボサの髪、目の下には隈が出来ていて着ている服もよれよれ、明らかにやる気の無さが感じ取れる男だった。
本来なら居るはずのない男にも何ら驚きもせず祥平は普通に会話を進めていく。
「…なんだ居たのか…ああ、別に構わないけど、ゼウスは今日こっちに着てたのか。わかってたらもてなしも出来たのに」
「問題無い、世界の因果律を少々弄っていたら疲れたので、息抜きをしに来ただけだ」
「ふーん、神様もいろいろあるんだね。まあよくわかんないからそこら辺のことはいいや、今お茶入れるから座って」
そんな会話をしながらこの家に時々来る人間以外の訪問者、神ゼウスに慣れた手つきでお茶を出した。
ゼウスがこの家に現れたのは一年前のこと、何の前触れもなく突然現れて飲み物を要求してきたときには祥平は驚きすぎて動けなくなっていた。
それからと言うものゼウスは「気に入った」
と言って、頻繁に祥平の家を訪れるようになっていた。
「それで話ってのは?」
自分の分のお茶を入れゼウスの向かい側の席に座った。
ゼウスは「うむ。」と頷くとお茶を飲み一息ついてから口を開いた。
「そのことなんだが、祥平、お前は異世界に興味は無いか?」
…………?
「……ちょっと待って、いきなりすぎて意味がわからないんだけど?」
あまりにも唐突で、意味が分からなかった祥平は首を傾げた。
今までにもゼウスからは突拍子もない話を聞かされたり、暇つぶしと称して意味の分からない単語が大量に出てくる愚痴を聞かされたりと散々な目にあってきたのだが、これはまた何が言いたいのか全くわからない質問だった。
「うむ、つまりだな…」
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