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長谷部さんが予約してくれたのは、こじんまりとした居酒屋だった。
店内は広いとは言えず、席数も少ない。
カウンターとテーブル席の奥に小さな座敷が一つあった。
「ああ、みゆきちゃん、奥ね!」
店内に入ると同時にカウンターの中から女将さんがお客さんに料理を出しながら声を張った。
その隣ではご主人が忙(セワ)しなく動き回っている。
「ありがとう」
長谷部さんは明るく返事をして、室長を先に座敷に促した。
室長が先に上がる間に、私は彼女に聞いた。
「長谷部さん…よくここに来るんですか?」
すると彼女は私に耳打ちしながらカウンターを指さした。
「そう、いつも一人で、あっちの席」
「…そうですか」
「さ、上がって」
そして彼女は離した体をもう一度私に寄せた。
「…室長、近くで見ると、ホントにいい男ね」
長谷部さんはそう言うと、座敷に足を進めた。
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