初日~夢~

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初日~夢~

翌朝、ニュースはあの男の事を、事件として報じていた。 再び恐ろしさに見舞われた僕には、テレビの見える食卓に長居することなどできなかった。 部屋に戻り、いつもの通り、何もなかったように学校の支度をしていると、無くしたはずの単行本が出てきた。 昔、繰り返して読んだ児童文学だ。 懐かしさに浸りながらも、時間に追われていた僕は、その本を適当に置き、家を出た。 駅前の大通りに出ると、一晩明けたというのに、取材を続けているマスコミの人たちでいつもより混んでいた。 他の人たちへの取材に打ち込んでいたようで、僕に目を向けなかったのには助かった。 いつもの歩道橋は通行を止められている。仕方ないので急いで横断歩道を渡った。 学校でも何もなかったようにすごした。 担任の岩村先生曰く、 「歩道橋の事件の犯人はまだ見つかっていない。 お前らは高校生だから自己防衛くらいできるだろうが念のために言っておく。 夜道と怪しい奴には気をつけろ、何かに巻き込まれるかもしれん。」 ということだった。 クラスメイトは皆、怖がったり馬鹿にして笑ったりとバラバラに喋っているが、 その中の誰一人として、自分が巻き込まれるかもと、本気で考えているやつは居なさそうだった。 隣の席の棚田から、 「どうする?犯人に狙われたとしたら。」 と言われたが、僕にはそんなことよりも、目撃者になにか言われて捕まるのではないか。ということの方が不安だったので、有耶無耶に返してしまった。 何事もなく授業が終わると、僕はいつもどおり、仲のいいメンバーと、騒がず黙らず、いい塩梅で帰った。 唯一いつもと違ったのは神風が吹いたことだろう。 お嬢様学校の生徒と偶然すれ違いかけたときに、いい風が吹いた。 つまらない日々を我慢して過ごしているんだ、このくらいの眼福は独り占めしてもいいだろう。 そんなことを思いながら家に帰り、飯を食い、そのまま寝た。
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