第3章

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------ ------------ カチャン…。 処置室では片付けを始める音が響き…。 慌ただしかった足音は、静かになり…変わりに …ピッ…ピッ…ピッ… 彼の規則正しい心臓が電子音となり響いていた…。 扉の向こうにいる彼女は俯いて、両手を握り強く祈っている。 ゆっくりとした歩調で医師が側に行き、彼女の肩をポンッとたたく。 「彼はよく頑張りました。まだ油断は出来ませんが、あなたを置いて逝く事はないでしょう。」 医師の言葉は、彼女の心を癒すと同時に私の心をも癒した。 ふと自分の頬に暖かな雫が流れるのを感じた。 私は彼女に歩み寄り、彼女の堅く握られた手を自分の両手で包んだ。 「良かった…。早く彼の側に…。」 そういって彼女の背中をポンッと押した…。 彼女は私を見て、一瞬驚き…そして駆け足で彼の元へ行き、震える手で彼の手を握りしめた。 看護師が涙を流すなんて…って変に思ったかな…。 私は、心に閉ざされた記憶に向き合う日が近づいていると感じた。
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