第1章

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陸が転勤して始めてのクリスマス。 「紗良、ただいま。一人で淋しくないかい?」 「淋しいに決まってるでしょ。世間は、クリスマス一色だよ。会社の人にも旦那さまとステキなクリスマスを…なんて言われたんだから。陸のいじわる。」 「ごめん、ごめん。仕事で紗良を悲しませたくなかったのに。ごめんついでに、月末から2ヶ月アジアに出張なんだ。」 「えーっ。うそ?大晦日は?お正月は?イヤだよっ。…淋しい。一緒に居たいよ。陸と離れるのイヤッ。」 ホント、私ってワガママだったと思う…。 陸から届いた、クリスマスプレゼントの大きなクマのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。 結婚して直ぐに愛する旦那様は、転勤…結婚して始めてのクリスマス仕事…そして年末年始を挟んで海外出張…。 夫婦らしい事は、何も出来ていなくて、交際中のただのワガママな駄々っ子になっていた。 それがきっと陸を苦しめていたんだと、今ならわかる。 夫婦って何だろ? 私、陸を支えるどころかお荷物になってた…。 -------- ------------ 私は陸を驚かせたくて、海外出張から帰る2月に、空港に出迎えに行った。 きっと陸ビックリするだろな。早く笑った顔が見たい。早く抱きしめて欲しい。早くキスしたいよ…。 予定時刻になって急に心臓はバクバクと大きな音をたて…。 どうしよ…何て声かけよう…まずは、お帰りだよね…それから…大好き…って…あっ…告白になってるし…あ~もう…妻って難しい…だってまた夫婦らしいこと何もしてないもん。だから、分からないよ…。 顔を両手て隠して俯いていると、沢山の人混みが出てくるのがわかった。 顔をあげて、必死に陸の姿を探す。 すると背が高くて、整った顔立ちの懐かしい姿が見えた。 陸?何だか痩せた?顔も疲れてる。 私は、陸のそんな変化に不安を感じながら…それでも自分の溢れ出す気持ちが抑えきれず…。 「陸、お帰りなさい。」 陸に駆け寄り、抱きついた。 ふわっと森林を思わす穏やかな香り…。 ああ、私の淋しかった心が満たされていく…。 離れたくない…。 頭の上から、優しい声が聞こえた。 「紗良?どうして…一人で東京まできたのかい?」
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