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幸せな週末は静かに終わり、カーテンから差し込む朝日がやけに淋しかった…。
あぁ、また離ればなれの日々がやってくる…。
陸のスヤスヤ眠る顔を見つめて、その頬に優しく触れ、優しくキスをした。
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空港で…。
「紗良…また元気がもらえたよ。可愛い妻の為に仕事頑張るよ。夏には一緒に海外生活出来るの楽しみにしてるよ。」
陸は穏やかな表情で、さらりと言った。
「……え?海外?」
私は、あまりに急な事に驚いて目をパチクリさせた。
「僕からのサプライズ。」
そう言って、またイタズラな顔をして、ポカンとしていた私に、チュッとキスをした。
「海外なんて、私大丈夫かな…?でも夏には一緒に居られる。やっと二人で暮らせる…うっ…。」
嬉しくて顔は綻び、半ベソになった。
陸は、優しく私を抱きしめて囁いた。
「もう一人ぼっちにさせないよ。死ぬまで僕らは一緒さ。紗良、愛してる。」
少し儚げに、聞こえた陸の言葉に胸がつまった。
……これが、私が見た最後の、陸が生きていた姿だった…。
私も職場では看護師として成長する為、必死だった。語学学校にも通い詰めた。
そして、陸も仕事に追われていた…。
ゴールデンウィークもお互い仕事…。
梅雨の時期も、陸は海外出張で日本を離れていた…。
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今でも分からないよ…真相…。
陸?本当に彼女と浮気していたの?
本当に、私を愛していたの?
私達、本当に夫婦だったの?
ごめんね…淋しい思いをさせて…。
ごめんね…陸の気持ち分かってあげれなくて…。
なんど謝っても…もう陸の声は聞こえない…。
『紗良…。』て優しく囁いてよ…。
五年たった陸の命日…。
陸のお義父さんが私に言った。
きっと私を思っての事だろう。
陸の眼差しとよく似た優しい瞳で、
「紗良…紗良はまだ若い…。これからいくらだって人生やり直せる…高藤の籍から抜けなさい。不甲斐ない息子ですまなかった…。」
私の手を強く握り、何度も頭を下げた。
全てが他人事のように…幸せな時間の全てが嘘だったかように…。
五年たった陸の命日に、私は高藤の籍を抜けると同時に…
…私を捨てた…。
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