第1章

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幸せな週末は静かに終わり、カーテンから差し込む朝日がやけに淋しかった…。 あぁ、また離ればなれの日々がやってくる…。 陸のスヤスヤ眠る顔を見つめて、その頬に優しく触れ、優しくキスをした。 -------- ------------ 空港で…。 「紗良…また元気がもらえたよ。可愛い妻の為に仕事頑張るよ。夏には一緒に海外生活出来るの楽しみにしてるよ。」 陸は穏やかな表情で、さらりと言った。 「……え?海外?」 私は、あまりに急な事に驚いて目をパチクリさせた。 「僕からのサプライズ。」 そう言って、またイタズラな顔をして、ポカンとしていた私に、チュッとキスをした。 「海外なんて、私大丈夫かな…?でも夏には一緒に居られる。やっと二人で暮らせる…うっ…。」 嬉しくて顔は綻び、半ベソになった。 陸は、優しく私を抱きしめて囁いた。 「もう一人ぼっちにさせないよ。死ぬまで僕らは一緒さ。紗良、愛してる。」 少し儚げに、聞こえた陸の言葉に胸がつまった。 ……これが、私が見た最後の、陸が生きていた姿だった…。 私も職場では看護師として成長する為、必死だった。語学学校にも通い詰めた。 そして、陸も仕事に追われていた…。 ゴールデンウィークもお互い仕事…。 梅雨の時期も、陸は海外出張で日本を離れていた…。 -------- ------------ 今でも分からないよ…真相…。 陸?本当に彼女と浮気していたの? 本当に、私を愛していたの? 私達、本当に夫婦だったの? ごめんね…淋しい思いをさせて…。 ごめんね…陸の気持ち分かってあげれなくて…。 なんど謝っても…もう陸の声は聞こえない…。 『紗良…。』て優しく囁いてよ…。 五年たった陸の命日…。 陸のお義父さんが私に言った。 きっと私を思っての事だろう。 陸の眼差しとよく似た優しい瞳で、 「紗良…紗良はまだ若い…。これからいくらだって人生やり直せる…高藤の籍から抜けなさい。不甲斐ない息子ですまなかった…。」 私の手を強く握り、何度も頭を下げた。 全てが他人事のように…幸せな時間の全てが嘘だったかように…。 五年たった陸の命日に、私は高藤の籍を抜けると同時に… …私を捨てた…。
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