第1章

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空を切る包丁。 私は、何を望んでいたのだろう? 博が勝ち、私があの詰まらない日常に戻る事… それとも、誠也君が勝ち、新しい生活、どうせ直ぐに飽きられ一人になると分かっていても? どっちの結末も私には幸せが訪れない…何故、何故私だけ幸せが待ってないの… 二人の争う中、私は、自分の事しか考えられなかった、包丁を振り回している以上、大怪我や死が待っているかもしれないのに。 「…くそ、何でこんなことに、なったんだろ、くそ、我が儘な元カノと別れて、やっと…普通の女性と出会えたのに…不倫かよー。」 「……え。」 今のが、誠也君の本心…? 「ガキ…やっぱりお前には、恋愛は早かったんだな。」 博の蹴りが包丁を飛ばした。 「くそー。」 「観念しろ、ガキ…お前に奈緒美は勿体無いんだよ。」 ドス。 「…え?奈緒美…」 「ぐふっ…奈緒、美さ…ん…」 「ごめんね…ごめんね…」 床に落ちていた、小さな手紙… 白い紙に、黒い字、モノクロのはずのその小さな紙切れが… 赤に、染まっていく。
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