第1章

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その日の夕飯時、何時もより早く帰ってきた夫に変なことを言われた。 「お、奈緒美、鼻歌何て、珍しいじゃないか!!何か良いことあったのか?」 「え!?私、鼻歌何てしてた?気付かなかったな。」 嘘だった、何時もモヤモヤと悩んでいた事を忘れて、頭の中はあのあどけない顔でいっぱいだった。 あの笑顔を思いだしては笑い、あの失礼な言動を思いだしは膨れる、昔の事を考える暇を奪ってくれていた。 でも、夫を目の前にすると、またモヤモヤした気持ちに戻った。 朝目を覚まし朝御飯を作る頃には、あの笑顔を思い出せないでいた、このままじゃあ出会ったことも消えてしまう……そう、思えた。 だから、私は、夕方スーパーに向かう、あの笑顔に会うために。 「今晩は、来てくれたんですね。」 「うふふ、違うでしょ!いらっしゃいませじゃないの、ここは?」 「そうですか?知り合いだしいいかなって…」 「そうゆうもの?」 「ええ、今の時代は、こんな感じです。」 「何か、ムカつくわね。」 「あははは、また、ムカつかれましたね。」 「そう、ムカつかれてるのよ…言いづらいわね、ムカつかれって。」 「あははは。」 「うふふ。」
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