第1章

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それから、何日かして、私は、スーパーの常連になっていた。 向井誠也との、他愛の無い会話が私を救ってくれていた、人の笑顔の力なのか? それとも、私の恋心なのか? どんよりとした、厚い雲に覆われた私の日々は、雲の切れ間から光が差していた。 「あ、今日は麻婆豆腐ですか?」 「え!?ちょっと勝手に見ないでよ。」 「だって、見ないとレジうてませんから。」 「違うわよ、見ても見ないふりしなさいって事よ。」 「あー、空気読む的な、でも、つい、気になって…僕麻婆豆腐好きなんで。」 「そうなんだ、ハンバーグとかオムライスが好きそうに見えるけど…まぁー見た目じゃ分からないか…」 「そうですよ、見た目じゃ分からないですよ、確かにハンバーグやオムライスも好きですが。」 「やっぱり、でも、私の麻婆豆腐は中々よ機会があれば食べさせてあげたいわね、きっと、ハンバーグやオムライスよりも好きになるわよ。」 「やったー絶対ですよ、約束しましたからね。」 社交辞令でも、嬉しかった… 一人暮らしのアパートに上がり込み、エプロン姿で台所に立つ自分を想像した。 そんな事を考えていたら、つい声が出てしまった。 「あれ、あなたは一人暮らし?」 「え、はい、一人暮らしですよ。」 「あ、変なことを聞いてごめんなさい。」 急に恥ずかしくなって動揺してしまった、顔が赤くなっているのが鏡を見ないでも分かった。
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