第1章

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そんな、会話があるだけましだった。 少し田舎のこの町に、マンションを買った。 その、一つの区切りから一年ますます私たち大谷家は冷えきっていた。 朝… 「おはよう奈緒美…じゃあ、行ってくる。」 「うん…いってらしゃい…」 微かな声でする、微かな会話、最近は目を合わせる事もなくなった…いいえ多分、合わせているのに記憶に残らないだけ、好きな人の瞳も今は、テレビと同じで、見流すだけの只の箱。 朝は、朝食を作る、食べる時と食べない時があるから、一食しか作らない、 夫が食べなかった時は、私の昼食に、食べた時は、昼食は適当に作る。 昼に、朝飯を食べる度に、私の心は病んでいくようだった、それならば捨ててちゃんと昼食を作れば良いのにって思うかも知れないけど… 自分が作った物を捨てるのもまた、心に刺さった。 マンションのローンを返すために、パートを探した、仕事をしていたのだが、一度妊娠したかもしれないとなった時に、辞めてしまった… あの時、間違いじゃなかったらってたまに思う、でも、その時の夫の笑顔を覚えている、顔を覚えてる訳ではなく、その時の夫の笑顔がもの凄く嬉しそうだった、という記憶として残っている。 何故か笑顔を思い浮かべなれない、最近は笑顔を見せてくれないからかな? 今の笑顔もあの時の笑顔もきっと同じなんだけど、記憶では違う事になっている、一度残念な思いをさせると、笑顔も怖くなる。 「早とちりして、ごめんね。」 「ううん、そんなこと無いよ、奈緒美らしいよ。」 「……」 そんな、やさしさが逆に痛かったのかもしれない。
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