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台所まで吹き飛んだ誠也君は、包丁を手に取った。
「くそ、何しやがるんだ、このくそオヤジー。」
包丁が空を切り、ブンッ、ブンッと音が鳴っていた。
「…ガキがそんなもの、持つもんじゃねぇー包丁はおもちゃじゃねえよガキーー。」
二人は私を忘れて、争いだした、さっきまで私にどちらを選ぶか決めさせようとしていたのに、自身の誇りやプライドを守るために、虚勢を張り戦うのだ。
私に、二人に止めて何て言う資格は無い、更に、命懸けで取り合われる資格もない。
包丁を下手に振り回し、只、奇声を上げるだけの誠也君。
机の上には、果物ナイフがあるにも関わらず、素手で戦う博。
これだけ、騒いでいるのに、このアパートの住人は何をしているのだろうか?
そこまで、無関心なのだろうか?
普通に生活している人々が、まさか隣近所で殺し合いをしているなんて、想像出来ないと言う事なのだろうか。
「ガキに人が殺せるのかー。」
「ガキじゃねぇー。」
凄く長い間戦っていたような気がするが、多分、ちゃんと計ったら五分も経っていないだろう。
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