第1章

44/46
前へ
/47ページ
次へ
台所まで吹き飛んだ誠也君は、包丁を手に取った。 「くそ、何しやがるんだ、このくそオヤジー。」 包丁が空を切り、ブンッ、ブンッと音が鳴っていた。 「…ガキがそんなもの、持つもんじゃねぇー包丁はおもちゃじゃねえよガキーー。」 二人は私を忘れて、争いだした、さっきまで私にどちらを選ぶか決めさせようとしていたのに、自身の誇りやプライドを守るために、虚勢を張り戦うのだ。 私に、二人に止めて何て言う資格は無い、更に、命懸けで取り合われる資格もない。 包丁を下手に振り回し、只、奇声を上げるだけの誠也君。 机の上には、果物ナイフがあるにも関わらず、素手で戦う博。 これだけ、騒いでいるのに、このアパートの住人は何をしているのだろうか? そこまで、無関心なのだろうか? 普通に生活している人々が、まさか隣近所で殺し合いをしているなんて、想像出来ないと言う事なのだろうか。 「ガキに人が殺せるのかー。」 「ガキじゃねぇー。」 凄く長い間戦っていたような気がするが、多分、ちゃんと計ったら五分も経っていないだろう。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加