違う世界の者達

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ついでに、イラついたらしく睨みも付け足す。 殺気を感じた狗威は呆れてそれ以上喋らない。 「ごめんね。買い出しまで付き合わせちゃって」 狗威をまたいで氷苗が申し訳なさそうに言う。 街のスーパーを出ての歩道。 翠達は横一列に右から翠、狗威、氷苗と並んでいる。 「ワシが怒っとるのはそこではない!校長はあそこでは偉いかは知らんけど、話が長すぎるんじゃ」 小さく頬を膨らませ、翠は言う。 カバンが肩から落ちそうになり、勢いをつけ、また肩まで上げた。 氷苗は苦笑を浮かべる。 「ワシの父上も話が長ったらしい、長ったらしい!『忍は常に相手の話を我慢して聞かなくてはならない』とか言って長く話しおってからにっ」 「翠ちゃんのお父さんは、忍の事をすごく考えてたんだね」 翠の言葉に反応するように、氷苗は言った。 だが、翠の頬の膨らみは治まらない。 「本当じゃよ!話せば話すほど忍、忍ってワシを引き止めて。それで一体どれだけ周りに迷惑かけたモンだか…」 どうやら、翠は長話にトラウマになったらしい。 ……父親のせいで。 被害話をしているのに、氷苗は何故か嬉しそうだった。 「お父さんって、どんな人だった?」 ニコニコしながら氷苗が聞くと、翠は我に返った様な顔をする。 多分、思い出に浸っていたんだろう。 「8歳の時に別れたからのう。口うるさく、毎日仏頂面だったのは覚えとるんじゃが…」 少しでも思いそうと首を捻るが、それ以上は思い出せなかった。 みるみる内に、翠は顔を曇らせる。 「最後に、『生きろ』と言われたのは覚えとる」 やはり、政府軍に村を襲撃された記憶が蘇ったのだろう。 翠はそのまま俯く。 氷苗もつられて眉を寄せる。 家族の話が、どうしても繋がってしまう。 残酷な記憶に。 頭の中が、呑まれてゆく。 「……考えるな」 不意に翠の頭に大きく広い感触が当たる。 翠が狗威を見ると、狗威の腕が上がっている。 その狗威の腕の先の手は、翠の頭の上に。 「主…」 「結びつけるな。過去の話だ。例えそれが恐ろしい事だとしても、今悲しんだ所で何も出来やしない」 仏頂面に、不器用な言葉。 それでも、元気づけている優しい言葉。 「それでも忘れる事だけはするな」 最後は命令。 翠と氷苗は、「はいっ」と返事をする。
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