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夜
夕飯を食べ、数時間後。
氷苗と菫は忍装束に身を包んでいた。
肌の白い氷苗は忍び装束の色が黒。
まず、鎖帷子(くさりかたびら)を着用する。
上衣は袖の無いものを着用。
別れて、腕の方は手首から肘の手前まで。
次に真っ黒な上着を袖が肘までのを着用して袖の裾を紐で縛り、下の袴は七部丈。
上着の裾を袴の中に入れ、紐で袴が落ちない様に腰の高さで縛る。
袴の裾も邪魔にならない様に紐で縛る。
黒い足袋を履き、細く長い布で腰を縛って一息つく。
おおよその着替えはこの様な形になる。
菫の場合、闇夜に近い暗い紫で身を包む。
鎖帷子を着用し、腕も同じ。
下半身の着用物は膝上までで、膝下から足首までにかけて鎖帷子を着用。
上着は裾を出し、帯で留める。
上着もまた、半袖である。
同じく黒い足袋を履き、一息ついた。
ちなみに帯の色は紺色だ。
二人共着替えを済ますと、翠に向く。
「改めて、『銀』(ぎん)こと玖月 氷苗です」
「『紫水晶』(むらさきすいしょう)こと糸鳴 菫よ。ま、よろしくとでも言っておくわ」
「お主は事ごとく生意気な奴じゃのう…」
菫の自己紹介にイラついたのをつい口に出す翠。
口に出したのが最後。
案の定菫は翠を睨みつけた。
「二人共抑えて抑えて。翠ちゃん、私達は任務をする時は偽名で呼びあっているのよ。例えば、私で言う『銀』。菫ちゃんで言う『紫水晶』。本名がバレちゃうとここが私達の居場所だって政府軍に分かっちゃうからね」
人差し指を立て、翠に説明する。
最後の一言は、とても注意深く言う。
当たり前だ。
このマンションがバレると皆の命が危うい。
捕まれば死刑は免れないだろう。
「それに任務もおろそかにしてはダメ。政府軍に見つかったらその場で射殺かもしくは捕まってここの居場所を嫌でも吐かせるでしょう。吐いても吐かなくても殺されるのは絶対だからね」
任務は、死と向かい合わせ。
任されるのは名誉な事だが、それは仲間の命を預かるのに等しいのだ。
政府軍は、忍者を見つけたら迷わず発砲する。
そしたら確実に命を落とすだろう。
たとえ生き延びたとして他に仲間が居るとみなし、居場所を吐かせ、用済みになったら殺される。
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