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どっちにしろ、命がけには変わりない。
「時間だ。行け」
部屋のドアを開け、狗威は言う。
「「はっ」」
それに二人はすぐさま反応し、頭巾をかぶる。
氷苗は刀を背中にさし、紐で結び付ける。
マンションは外へ繋ぐ場所が玄関かベランダしかない為、ベランダから二人は隣の建物へとつたり出る。
行き間際に氷苗は「行ってきます」と、頭巾越しに微笑んで言う。
慌てて翠は答える。
「気をつけて」
目元で氷苗は嬉しそうに微笑み、隣の建物へ降りて行った。
ベランダから二人を見送ろうとするが、狗威によって制された。
「こんな夜にベランダに出てたら不審がられる。中で待っていろ」
「…はい」
(何故、仕事をするだけで命を懸けなければいけないんじゃ…)
翠は思う。
ただ、昔からの伝統を受け継いでいるだけなのに。
人を殺す事だけが忍の仕事ではない。
人に明かせない手紙を誰にも知られず届けたり、夜にしか出来ない事をしたりする事なども忍の仕事だ。
人を殺すのは忍が絶対絶命の時でか、任務として遂行する時でしかない。
出来るだけ、武器を壊す程度に抑えている。
だが、政府軍は容赦無く殺す。
(むしろ捕まえるのは政府軍の方じゃろ)
「今の内、ここの事を教えておく」
テーブルの椅子に腰掛けて狗威は言う。
我に返った翠も慌てて向かい合わせに座った。
「『ここの事』とはどういう事を
じゃ?」
「貴様は何をすればいいのかオロオロしたいのか」
いわゆる、恥をかきたいのかということ。
それだけは断固嫌だと翠はめいいっぱい首を横に振る。
「まず、この忍者集団の中にいる仲間は氷苗、菫、私、貴様の四人だ。少ないと思うが、これが丁度良い。忍者集団は人数が少ないほど政府軍に見つかりにくいからな」
「他の忍者集団はおおよそ何人なんじゃ?」
「多くて五~十人程度だ。ここみたいに一ヶ所に集まって暮らしているのはごくわずかだ。他に、住んでいる所がバラバラで、内一人が一人暮らしとなり、その一人暮らしの住んでいる所に集まって密会を行い、任務をこなす」
ほとんどの忍者は一般人に成りすまし、普通の生活の中任務を行っているという状態だ。
中に翠みたく未成年者の場合、大人の忍者が出来るだけ保護をする。
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