秘密のマンションの一室

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すると廊下に面してあるドアから少女が現れた。 その少女は小学生のような体格をしていて、しかし大人の様に落ち着いた様子である。 肌の色は色白。 顔的には大人の女性の様で、とても綺麗な顔立ちである。 とてもおとなしい雰囲気で、案の定口調が大人の女性の様だった。 「……例の子?」 翠にチラッと視線を向けただけで、あとは氷苗に顔を向けるばかり。 「そうなの。菫ちゃん本人か確かめてくれる?」 そう氷苗が言うと、まともに翠に目を向けた。 翠は少女を見て固まっている。 何故固まっているかというと、少女の髪は白一色に染まっていたからだ。 目は少し茶色がかった黒なのに、髪は異様に全体的白髪。 その白髪は、太ももの辺りまで伸びている。 少女は翠の驚き様に見向きもせず、ただジッと翠を見つめる。 そして、 ピシッ 「あでっ」 翠にデコピンを食らわした。 いきなりの事に翠は頭がついていかず、痛みのままに額を抑え込む。 少女はその後一言、 「本人ね」 と言って確認を終わった。 氷苗は苦笑を浮かべながらも「良かった」と言う。 「んなモンで分かる訳なかろうがぁっ!!」 そう怒鳴ったのは翠。 怒鳴った途端、少女は翠をギロッと睨みつけた。 顔が綺麗な程、睨まれると恐ろしい。 翠は少し縮こまる。 「生意気ね。口を削いであげましょうか?」 (生意気なのはどっちじゃよっ!) 翠は心の中で反論。 すると更に睨みが増して見えた気がしたらしく、余計に縮こまった。 「ま、待って菫ちゃん。本人は本人なのよね」 二人のやり取りの間に氷苗は水をさす。 少女は氷苗に視線を戻し、コクンと頷いた。 「なら初めからいがみ合いなんてしないで。せっかく仲間が一人増えたのに…」 そう氷苗は少女をなだめると、少女はその場を離れた。 「別に、仲間なんて欲しくないわ」 「またそんな事言って…」 少女の言葉に氷苗は困り果てた顔をする。 その場を離れた少女はドアを開けた後、クルッと翠達に向き直り、口を開く。 「私は糸鳴 菫(しな すみれ)。ここに来たこと、せいぜい後悔するといいわ」 少女、菫はそう言ってリビングを去った。 すっかり空気が冷たくなったリビングで、翠と氷苗はソファーに座ったまま。 「ともかく、我が忍者集団にようこそ。西島 翠ちゃん」 にっこりと笑い、翠に向き直りながら氷苗は言う。 翠は不快な表情をしたまま、ドアを睨みつけていた。
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