最終章

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「へー… そうなんだ… 澪ちゃんがそう決めたんならいいけど。別に。」 洋子さんはつまんなそうにそう言った。 「でも、 来年の希の幼稚園入園まで、お願いしてもいいですか? 近くなので連れてきます。 仕事は続けるつもりなので。」 そう言うと、やっと笑ってくれた。 洋子さんは希がもう来ないと思ったのかな… 少しずつ荷物を片づける。 そんなに物が多い方じゃないけど、 希の小さい頃の服やおもちゃ。 4年も住んでると、やっぱり要らない物が多い。 宋さんのお宅に行くわけだから、 いらない物はやっぱり捨てなきゃ… 引っ越しはたぶん、ひと月後。 キッチンをリフォームするって言ってた。 そんなことまでしてもらっては悪いと思ったんだけど、 もう古い家ですから。 と、嬉しそうに言うものだから、 つい、甘えちゃった。 あれからお宅にお邪魔したけど、 大きなお宅に独りで住んでて、 使ってるのはリビングと寝室だけだと笑ってた。 外食がほとんどで家ではお茶を沸かすことも殆どないと。 だから、 水回りだけは大急ぎでキレイにしてもらうから、 それまで待っていて欲しいと。 何をするのも一生懸命、精一杯。 そんな誠実さが、 なんかチクリと刺さるんだ。 私のどこか、人に見せられない部分に。
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