最終章

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苦しい。 誰かを想うことはこんなに苦しいことだったんだろうか。 こんな歳になって、 こんな気持ちが存在することすら知らなかったんだから。 だけど、 それだけじゃない。 彼女が話してくれたいろいろなこと、 その話や彼女の表情に、 どれだけ癒され、 暖かさをもらったことか。 嫌いだった両親のことも好きになれた。 今まで避けてたことも、 真っ向から向かっていけるようになった。 自分の嫌いな部分も、 彼女となら好きになれると想った。 それにそれに… 磨り硝子の窓にドアに近づく影が見えて… 俺は少し離れた。 彼が出てくる。 ドアが開いて、 彼が出てくる。 ドアを閉めたまま、 その取っ手を握ったまま… 動けないでいる松田遙人を… 俺はどんな想いで見てたのだろうか。 思い出せもしない。 ただ、じっと見てた。 「何か。」 その声を合図に、 私は… 決着を付けようと決めたんだ。 決着なんて大袈裟なことは考えてなかったかも知れない。 でも、 今の自分の気持ちを彼に伝えないといけない気がして、 そうじゃないと、 また、 誰にも嫌われない、 事勿れ主義の、 イヤな自分に戻る気がして。
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