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「ウルルクのことが気になるかい」
盗聴防止のシャワー音を背景にジョージが低くいう。この天才児はでたらめに敏感だ。タツオが不信感を抱いていることを察知したようだ。
あのメールは情報保全部の関心の核を射抜きすぎている。いくら優秀とはいえ、ただの一生徒にそんなことが可能だろうか。タツオは気にもかけない演技をしたつもりだった。
「いや、そんなことはないよ」
じっと薄い茶色の目が見つめ返してくる。ジョージはエウロペとの混血のせいか、中性的だった。ひょっとすると養成高校一の美女と噂される東園寺彩子(とうえんじさいこ)よりも美しいかもしれない。
外国人のように肩をすくめると、ジョージはいった。
「わかったよ。白状する」
シャワーブースの間仕切りを越えて、手を伸ばしてきた。タツオの肩に手をおいた。
「ただし、絶対に人には話さないでくれ。極秘の情報だ」
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