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ずっと強いと思ってた葵桜秋。
出逢った時から、その力強さに惹かれた女性。
だけど本当の彼女は、俺が見てきた全てと何もかもが違っていた。
「君のことも、志穏も伊吹もちゃんと俺が守ってくよ。
だから、もう責めなくていい。
一族の決定で、志穏が伊吹となってその名を継ぐことになった。
だけど……その理由が、伊吹の聴覚障害と言うのは理由が気に入らない。
俺たちは今から覚えることがおおいよ。
志穏として生きることになる伊吹。
まずは伊吹が人とコミュニケーションをとりやすい環境を作らないといけないな」
そう言って話を切り出しながら、
聾学校で先生をしていたことのある人材の情報を
彼女へと伝える。
この屋敷で今後、住み込みで働きながら志穏となった伊吹の導き手になって貰えるように
探し出してきた存在。
そしてその人の存在は、俺や彼女にとっても、コミュニケーションをとるための手話を指導する
師となる存在。
俺たちだけじゃない。
この屋敷に存在する全ての人に、手話を学習して貰って
志穏が不自由のない生活を送れるように環境を作っていきたい。
俺が思い続けてきたことを、言葉にしてはっきりと
彼女へと伝える。
思い続けていても、言葉にしないと実際には伝わらない。
そう教えてくれたのは、心【しずか】さんだったか……。
睦樹の亡くなった奥さんの言葉が、
ストンの俺の中に落ちてきた瞬間だった。
双子が入れ替わった運命の日。
その日は、ようやく擦れ違い続けていた彼女と
ほんの少し距離が縮まったようにも感じた記念となる始まりの日だった。
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