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その後も、伊吹と志穏は同じように時を重ねた。
三歳になった時、伊吹は俺の母校である悧羅学院の昂燿校へと入学が決まり
寮生活が始まった。
そして志穏もまた、少しずつ読唇術と手話、紙に書いての会話を覚えて
それぞれの時間が大きく動き始める。
そんな双子が、瑠璃の封印を知るのはもう少し大きくなってから。
この時期のことを彼女が綴っていた日記を、
志穏が見つけ、伊吹を巻き込んで覗いてしまう。
ずっと隠し続けられると思っていた封印が、
露見して志穏と伊吹にまで真実を知られてしまった日。
伊吹として生き続ける志穏はゆっくりと彼女に伝えた。
『僕は兄さんの手伝いをしているだけだよ。
この家から出られない兄さんの代わりに、
僕はいろいろな世界を見て、兄さんに伝える。
だから兄さんは、弟なんかじゃなくて……
僕とってはずっと兄さんだから』
アイツがどんな思いで、その言葉を告げたのかは俺にもわからない。
だけど……幼い日の俺のように、
諦めながら、自らに課せられた運命を受け入れた。
そんな風にも捉えられる言葉だった。
双子の姉妹から続いてきた秘め事は、
今二人のジュニアをも巻き込んでもっと複雑に絡み合う。
そんな複雑に絡まり合う糸を
守りながら……俺は咲空良さんと睦樹に誓ったその言葉を
何度も何度も自分の中に言い聞かせながら歩き続けた。
もう戻ることが出来ない、
その愛しき日々を心にそっと抱きながら。
第二夜
「瑠璃の封印」 全21話
完結
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