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「あぁ、落ち着いたら今度は結婚式をあげよう。
小さくていい。
ちゃんと皆に祝福されながら、神様の前で愛を誓おう」
そう言って答えた廣瀬さん。
何時もなら羨ましいって思うはずなのに、
不思議なことに、今は心から姉を祝福したいと思えた。
私たちが再び元の名前に戻って一年が過ぎようとした頃、
姉は約束通り、山奥の教会で内輪だけを集めて廣瀬咲空良となるために
真っ白なウェディングドレスに身を包んだ。
私は妹の都城葵桜秋として、心から姉を祝福したいと思った。
その結婚式には、離婚した後も姉と寄りを戻すことが出来なかった
怜皇さまも二人の友人として姿を見せていた。
その隣には、瑠璃垣伊吹として生きる姉の子である廣瀬尊夜。
そして、睦樹さんと心【しずか】の子供であり、姉が母親となって育ててきた紀天君。
皆に祝福されて、姉は凄く嬉しそうに微笑んだ。
今まで誰にも見せたことのない天使のような微笑みで。
姉が幸せになったのを見届けると、
私は一人教会を抜け出す。
離婚した後からずっと思い続けてた私の願い。
散々苦しめ続けてきた姉が幸せになるのを見届けたら、
私の最愛の我が子の傍へと旅立ちたい。
もう……お姉ちゃんは大丈夫。
伊吹……寂しがらないで。
もう一人にしないから……ママがすぐ近くに行くから。
教会を出てそのまま山の中へと深く入り込んでいく。
手に隠し持つのは眠れなくて通い続けていた病院で処方して貰った睡眠薬。
『お姉ちゃん……どうか幸せに……』
最後の望みを口にして手にしていた数枚のシートの睡眠薬を飲み干すと、
私はその場へと倒れ込んだ。
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