第1話~提督着任。午後3時の出来事~

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俺の姉貴は以前、此処・呉鎮守府の提督だった。 異名は「再臨せしソロモンの悪夢」。呉鎮守府のみならず、世界にまで名を轟かせた伝説の女提督だ。 ちなみにソロモンの悪夢とは、1942年(昭和17年)11月12日~15日にかけてソロモン諸島にて行われた、「第三次ソロモン海戦」において無双を誇った白露型駆逐艦、夕立(ゆうだち)の異名から取られたものである。 その彼女は、8年程前に殉職した。 姉貴を殺したのは、人類の敵。それについては更に半世紀程前のことだ。 簡単な話、奴等は人類に牙を向いてきた。 モノクロームの身体に剥き出しの歯、頭だけの異形から歪な人の形をしたモノまで存在する、邪悪な禍神(マガガミ)。 深海から現れた亡霊と喩えられた其れは、「深海棲艦-しんかいせいかん-」と名付けられた。 奴等は目的も、後ろ楯となる国や組織も持たない。只海を荒らし、破壊を続けるのみ。 その人類の敵である存在に対抗するために、日本は過去のように再び軍事力を持って立ち向かう事にしたのだ。他国と戦うためでなく、人が生きる未来を作るために。 そして姉貴はその深海棲艦と勇敢に戦い、海に散った。 俺はその深海棲艦が許せない。否、許せる訳が無い。姉貴の命を奪った、人類に災厄を振り撒く深海棲艦を一匹残らず殲滅する。 突拍子も無く非現実的、そして成し遂げられるかも不明瞭な話だが、俺はやると決意した。 深海棲艦──奴等を倒すため軍人になり、ここまで歩んで来たのだ。
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