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ふと目が覚めると外は夕日が沈みかかっていた。
しかし、なぜか知らないが飼い主たちの様子があわただしい。
ワンッと吠え、オイラの飼い主に目覚めたことを知らせる。
「あ……! ヤス、起きたのね。ねえ? この人の猫がどこに行ったか知らない?」
この人というのは飼い主のお相手のことだろう。当然オイラはあいつの行方なんて知らない。
首を横に振る。
すると飼い主は残念そうな顔になり、「そう……」というと再び家の中を探し回るのだった。
――あいつまだ帰ってきてないのかよ……
お相手も必死になって自分の猫を探している。
その様子を見てオイラは駆け出した。
あの猫が外へ出た窓から自分も外へ出て、あの猫の微かなにおいを頼りに走る。
――バカかよ! なんで戻ってねんだ!
心の中で思った。
次第にスピードはどんどん速くなり、まるでの新幹線のような速さで道という道を走り抜ける。
……そしてついに見つけたのだった。猫は三匹の猫(多分オス)に絡まれていた。
「いいじゃねえか。俺たちと一緒にしてやれば、いいこといっぱいしてやるぜ~」
「やめてって言ってるでしょ!」
その様子を見てオイラは思い出していた。
猫のやっていることがまるっきりこの前の自分と重なったからだ。
「オイラはあんなにも卑劣なことを……自分はしていたのか……」
深く嘆き、心の中で悲しんだ。
そりゃ断られて当然だ……。僕は相手を困らせることしかしていなかった。
……何が人生最高だ……生き物をバカにするのもいい加減にしろ。
自分は自分自身に怒りを覚えた。
「いい加減にしろ! さっさとこっちにこい!」
「いや! いやああぁぁぁぁ!」
きっとこの彼女の声は人間にはただ猫が鳴いている風にしか聞こえない。
しかし、声が聞こえたオイラにとってそれは、彼女を脅かすあいつらオス猫に向けての怒りへと変わった。
「お前らいい加減にしろ!」
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