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「ボロボロね……」
「…………」
「なんかいったらどう?」
「…………」
「なんか言ってよっ!」
「…………」
口を動かすことだってままならないのだ。
必死にオイラは口を動かそうとしても意識はオイラの意志とは反対にどんどん遠のく。
「……きみは、だれなんだ?」
しかし、やっとの思いで出た僕の言葉は「助けて」とか「死にたくない」とか、そんな言葉じゃなかった。
彼女はすごく驚いた顔だった。
そして、瞳には大粒の涙をためていた。
なんだよ……泣くなよ……。泣きたいのは……こっちのほうなんだから……。
しかし彼女は、自分のわけのわからない最後の言葉に、必死にこたえようとした。
「……ニーナ」
「……にーな、か……いいなまえ、だな……」
メス猫の名前はニーナというらしい。でも、今更そんなことがわかったってなにになる……。
ああ……かっこつかない最後だな……。
飼い主にはどう思われるだろう? だめな柴犬だったなって思われるのかな……。
お相手のことはどうなるんだろう? オイラが死んでも飼い主には幸せになってほしいな……。
後、他には思い残すことはないかな……? ダメだ……意識が、意識がもう、持ちそうにない……。
ああ……死にたくないなぁ……。
そして自分は目を閉じ、深い深い眠りの底へと誘われるのだった。
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