第二章 和泉 則之の影

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  「言わないで辞めるより、まだいいでしょ」 「そういう、問題じゃ無い。お前の立場を考えたら、もっと前に言うべき話しだろ」 「しょうがないでしょ、急に決まったんだもん」 「だからってな、ナンバー1なんだぞ。客や、店への責任もあるだろ」 「立場ねぇ……」 「そうだよ、お前はこの店のナンバー1。それを考えりゃ、簡単に辞めるとか言えねぇだろ」 「でもさ、私が抜けりゃランクの下の娘が喜ぶよ」 「そういう問題じゃ無い。大体、理由は何なんだ」 「理由? 飽きたから」  店長は、それを聞いて呆れた。この業界は、舞夢の言う通り人の出入りが激しい。ある日突然、姿をくらます事も少なくない。  しかし、舞夢の場合。「はい、そうですか」と認められないのは、彼女がナンバー1だからだ。  舞夢と店長の話しは、平行線のまま終わる。  店は、営業中である。  客は、舞夢を待っているのだ。
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