0人が本棚に入れています
本棚に追加
よせばいいのに自らで他の家庭と較べて自分を大きく見せる。下を見ればきりがない、上を見てもきりがない、そんなことは分かっている。だから自分の位置を探す、自分が上位に落ち着く情報をあさり、それで家族を説伏せる。決して自分の言葉じゃない、彼の生き方に説得力はない。なぜならより高価な物、より高いサービスのほうがいいと確固として思っている。言い訳する言葉とは裏腹に顔つきにそれが表れている。
父親を取り巻く家族にしても彼の理屈の苦しさが分かっている。分かった上で父親の理屈を甘受し、父親に生活させてもらっているという弱みで、我慢と諦念の中で生きている。だから父親が借り物の言葉で、あたかも一般的を強く語る時、時折反発して相対的な自分の家族の暮らしを、自分の都合に合った裏付けをメディアに求める。妻や子供も進んで擁護してくれる雑誌やテレビ番組を父親に見せる。メディアは欲望の心強い味方でもある。新しいテレビ、新しい冷蔵庫、新しい洗濯機、新しい掃除機、新しい自転車、新しいテレビ・ゲーム機、新しい犬。
新しい犬?
「ゴールデン・レトリバーがいいよね、お母さん」
「そうねぇ、シベリアン・ハスキーもいいかしら」
最初のコメントを投稿しよう!