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「降らねば、どうする」
「討つ、との仰せでございまする。ここにある皆々様の血をもって、勝瑞の地を流れる川という川を真っ赤に染めると申しておりまする」
使者はにやりとして言った。
五千相手に、こちらは二万三千。造作もない、と言いたそうにしている。
「そうか」
言いながら存保は立った。手には、さっきと同じように太刀をにぎって。
広間の一同は固唾をのんで、様子を見ている。孝康は使者の武士を睨みつけている。
使者は、想定内と言いたげに、しっかと存保を見据えている。こういう仕事を引き受けるだけに、肝も据わっているようだった。
「帰って元親に伝えよ」
と言い、切っ先を使者に向けた。
「これがわしの答えじゃ」
言葉とともに、太刀の一閃。
「あっ」
と誰かが声を上げた。孝康は黙って成り行きを見守っている。
使者の髷が、ぽとりと落ちた。その髪がばさりとたれ落ちる。
使者は落ちた髷を拾ってかかげ。
「よくよく心得て候」
と言って、退去した。
戦いは避けられぬものとなった。
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