Ⅴ.

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そのまま、いつもよりも軽い足取りで昇降口へと向っていく。 だけど、近づくにつれてその歩幅は少しずつ小さくなって、そのまま立ち止まった。 「……尚吾」 あたしの視線の先には、手前の壁に腕を組んで寄りかかる尚吾が目に入ってきた。 少し俯いた顔をゆっくりと上げて、あたしを真っ直ぐに見据えた。 あたしと目が合って、だけど二人とも動かない。 周りで聞こえていた雑音もすべてが一瞬で無音になり。 ゴクリ、自分の唾を飲み込む音だけが大きく響いた。 彼のことを忘れていたわけではないけれど、一人で浮かれていたことに胸が痛んだ。 ちゃんと話をしなきゃいけないことはわかってたのに。 それを逃げるように今日一日尚吾はあたしのことを避けていたんだ。 教室の中で話すような内容ではなくて、でも、休み時間になるとすぐに教室を出て行ってしまう尚吾を追いかける勇気がなかった。 放課後も、誰よりも先に教室を飛び出した尚吾だったのに。 まだ校内に残っていたことに驚いた。
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