Ⅰ.

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授業が終わると、ガヤガヤと騒がしくなった教室の中。 それぞれが机の上を片付けたり、席を立って教室を出て行ったりする中。 「原田」 あたしの名前を呼ぶ、大好きな人の声が響いてきた。 どんなに周りがうるさくても、その声を聞き分けてしまう。 「放課後、これ取りに来い」 そう言って雑誌とiPodを持ち上げて、目が合うなりフッと笑みをもらして教室を出て行った。 その後を追いかけるように何人かの女子生徒が教室を出て行って。 『先生、今度ね…――』 その子達の少し高めの声が、教室の中にまで聞こえてきた。 『もうすぐバレンタインでしょ!? 先生にチョコ作ってくるからね』 楽しそうに笑う彼女達を少しだけ羨ましく思う。 あたしだって、彼女たちみたいに先生を追いかけて。 同じように先生と話したい。 「佐野さんたち、相変わらず先生追っかけてんね」 コンコンと机を叩かれて、あたしの前にはクラスで一番仲がいい千晴が笑顔で立っていた。
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