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少し戸惑っていた瞳が一度だけ伏せられて。
でもすぐに戻ってきた瞳は何かを吹っ切れたかのような、そんな瞳に変わる。
「……先生…好きだよ」
何度言っても足りないくらい。
まだ少し強張ったままの顔で、必死にニコリと微笑んでみせる。
先生が好きだよって、ちゃんと伝わるように。
ゆっくりと近づいてくる先生の整った顔。
真っ直ぐな瞳。
「……トーコ、好きだ」
優しく触れる唇に、あたしはそっと瞳をとじた。
何度目のキスだろう。
だけどこのキスにはちゃんとお互いの気持ちが通じ合ってる。
この間の意味のないキスとはまったく違う。
触れ合う唇からは優しさと甘さと、先生の思いも伝わってくる。
「このキスに意味がないなんて、言わせない」
そう耳元で囁いた先生は、さっきよりも少しだけ大人なキスをあたしにくれた。
あたしの中は先生でいっぱいで溢れてしまいそうなくらいで、先生の体温も匂いも、柔らかな唇も。
全部が愛しいと思った。
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