Ⅴ.

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「星野が結婚するのは、高3のときの副担任」 「えっ!?」 月曜日、放課後の数学準備室には九条先生だけじゃなくて星野先生もいた。 相変わらず片付けられないままの九条先生の机と、すっきりとキレイに片付けられた星野先生の机。 九条先生は自分の机に寄り掛かり、軽く腕組みしながらあたしを見ている。 そんな先生の隣の席の星野先生は、椅子に座り微笑んでいた。 「ゴメンね、てっきりトーコちゃんは九条先生から聞いてるものだとばかり思ってたから。 誤解させるようなこと言っちゃって本当にごめんなさいね」 申し訳なさそうにあたしを見る先生に、小さく首を振って。 「あたしが先生のこと信じられなかったのが悪いんです」 そう言って苦笑するあたしの頭を、九条先生は優しく撫でてくれた。 「あたしと先生が付き合いだしたのは、トーコちゃんと同じ高2のときだったの。 あたしたちのことが学校でウワサになっちゃって、いろいろ大変だったこともあったのよ」 「そうなんですか……」 「九条先生とは高校も同じでね。その時のことを知ってるの。 あたしがたくさん泣いたことも、傷ついたことも、知ってるから…」 だから、先生はいろいろ悩んでたのかもしれない。 「モモを星野のように傷つけたくなかったんだよ」 悪いかよ、と少しバツが悪そうに顔を顰める先生にあたしたちはクスリと笑った。
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