Ⅴ.

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「確かに傷ついたけど、それよりもあの人が隣にいてくれたことが幸せだったわよ」 「たくさん泣いたくせに」 「でも、泣いたぶんだけ先生はあたしを愛してくれた」 昔を思い出しているのか、星野先生の顔つきが少し変わる。 たくさん泣いた、なんて話しているわりに。 その表情はとても穏やかで、とても愛しそうで。 「あのときも、今も、あの人を好きになって良かったって思ってるわ」 優しく微笑む星野先生はとてもキレイで、その笑顔に心の中が温かくなっていくのがわかった。 星野先生はその先生のことを本当に好きなんだ。 今も、高校のときも変わらすに愛してるんだ。 その想いが真っ直ぐに伝わってくる。 「トーコちゃんだってそうよね?」 「えっ!?」 いきなり話をふられてビクッとするあたしは2人の視線を感じて顔を真っ赤になってしまった。 だって、今あたし…九条先生のことを愛しそうに見つめていたから。 大好きだって、きっと顔に書いてある。 そんなあたしに九条先生は困った顔をするのに対して、星野先生は優しく微笑んだままで。 「あんまりウジウジしてると、すぐに他の子に取られちゃうからね」 バシッといい音を立てて、星野先生は九条先生の背中を叩いた。
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